vol.7 田中和人 Kazuhito TANAKA

田中和人
「pLastic_fLowers」2017


2017年2月18日(土)~3月25日(土)
11:00~19:00 日月祝休 入場無料

アーティストトーク 2月18日(土)18時~19時
オープニングパーティー  2月18日(土)19時〜


Transpose / Perception ― 田中和人
梅津元


 「トランス/リアル」は、第一幕「トランス/モダン」3部作(第1回〜第3回)、第二幕「ポスト/リアル」カルテット(第4回+第5回)、第三幕「トランス/リアル」ダブル・ミーニング(第6回+第7回)と展開し、いよいよ最終回を迎える。現実(リアル)を直接表現することは不可能であり、世界を把握するために要請されるのが、媒体(メディウム)である。ここで、現実(リアル)が、超現実(スーパー/リアル)、極超現実(ハイパー/リアル)として立ち現れる時、モダニズム的規定を更新する「トランス/メディウム」の可能性が示唆される。
 田中が手がけるシリーズの中で、筆者が最も興味をひかれるのは〈GOLD SEES BLUE〉と〈blocks(light)〉である。前者は、薄い金箔を透かして風景を撮影した写真。青みを帯びた色彩と柔らかな光に特徴がある。後者は、ペイントされた木片を、極端にフォーカスをはずして撮影した写真。色彩の浸透、物体の認識、空間の把握に特徴がある。前者においては、金箔がフィルターとして機能している。後者においては、カメラと被写体の間の曖昧な空間がフィルターとして機能している。このフィルター機能を手がかりとして、今回展示される〈pLastic_fLowers〉へとアプローチしてみたい。
 〈pLastic_fLowers〉における透明板は、金箔が透明化して厚みをもったもの、花とカメラの間の曖昧な空間が圧縮されて出現したもの、と捉えられる。〈GOLD SEES BLUE〉においては面的な把握に、〈blocks(light)〉においては空間的な把握に、それぞれ溶け込んでいるフィルター機能が、意識的に対象化される。「意識的に見ること」と「見ることを可能な限り自動化すること」が重なり、見るべき対象と、見ている行為が多重化する。田中が花の「見え」を描画することにより、透明板は「意志を持ったフィルター」のように機能する。その「フィルターの意志」は、作家である田中の領域に介入し、スリリングな様相を呈している。当初はコンセプトによって明快に統御されていた〈pLastic_fLowers〉が、ここへきて、そのコンセプトをおびやかすような視覚の瓦解を告げ始めている。
 被写体、透明板、カメラの「位置=position」が互換性を帯び、視覚情報の入力から認識の形成へと至る過程において「知覚=Perception」が更新される。この「知覚の更新」は、田中が述べる「認識のプロセスを引き延ばすこと」と不可分である。〈pLastic_fLowers〉によって成立する視覚から逆説的に導かれる現実感は、被写体の「リアル」を超えた次元を垣間見せる。その次元において体験される「Transpose/Perception」という時空間から、「トランス/リアル」を逆照射することにより、「非実体的美術の可能性」が浮上してくることを期待したい。


▊田中和人 たなか・かずひと▊
1973年埼玉県生まれ。明治大学商学部卒業後、会社勤務を経て渡米。2004年School of VISUAL ARTS(ニューヨーク)卒業。
主な個展に2015年「pLastic_fLowers」(Maki Fine Arts、東京)、「high & dry」(Gallery PARC、京都)、2013年「blocks」(SUNDAY、東京)、2012年「Untitled Composition」(Maki Fine Arts、東京)など。主なグループ展に2015年「NEW BALANCE #3」(XYZ collective、東京)、「hyper-materiality on photo」(G/P gallery shinonome、東京)など。主な展覧会企画に2014年「NEW INTIMACIES / ニュー・インティマシー‒親密すぎる展覧会-」(Hotel Anteroom Kyoto Gallery 9.5、京都)、2012年「アブストラと12人の芸術家」(大同倉庫、京都)など。受賞歴に2011年TOKYO FRONTLINE PHOTO AWARD受賞。
http://kazuhitotanaka.tumblr.com/

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(左)「pLastic_fLowers #25」 2015年 Courtesy of Maki Fine Arts
(中)「blocks (light) #9」 2013年 Courtesy of Maki Fine Arts
(右)「Untitled Composition #1」 2011年 Courtesy of Maki Fine Arts