vol.1 高木こずえ  Cozue TAKAGI

高木こずえ「Bw01062」2017年、パネルに油彩
Courtesy of TARO NASU


2017年4月8日(土)~5月13日(土)
11:00~19:00 日月祝休 入場無料

アーティストトーク 4月8日(土)18時~19時
オープニングパーティー 4月8日(土)19時〜


高木こずえ 写真の彫刻化連鎖
光田ゆり


写真を撮るだけでひとは満たされる時がある。だが撮られた写真はそのままで撮影者を満足させるとは限らない。
写真発明以来、ひとは写した写真像に様々なかたちで手を加えてきた。飾りつける、着色する、切り抜く、貼り付ける、合成する、あまねく修正する、そしてあらゆる暗室作業、画面上での作業とプログラム、、、手段は変わっても、いつも像を加工せずにはいられなかったのは、なぜだろう。写真にひとはなんらかの方法を使って関与し、それを変貌させて、いわば望むものに変えようとしてきた。写真のどこか根底に、ひとをそうさせるものがあるらしい。
写真は望むものといつも同じというわけではないのはもちろんである。もっとも何が望みのものかは、それを作りうるまでは、わからないのであるが。
写真を作るひとは、写真とのあいだに、こうして相互に作用し循環し続ける、いわば反射的な関係を結ぶことになる。写された写真が、ひとに像を紡ぎ出させるのである。こうした写真の制作過程をここでは写真の実体化ととらえ、型から作り出す彫刻の制作過程と同じものと考えてみる。


高木こずえの手続きは、合成し色を選んだデジタル写真、という範疇にはとどまらない。彼女が「コラージュ」と呼んでいる、自分の撮影した写真を素材にして繰り返し編み込んでいく合成作業自体は、かなり感覚的に行われているらしい。そうした作業の反復が、もとの像のレイヤーを透過して、思いがけない未知の像を出現させる。それは実体のない、像と像の相互貫入から生じたいわばメタ・イメージである。
高木はそれらメタ・イメージをモノとして存在させようとする。布や木材など手近な材料を使って、手作業をもって、生じたデジタル像をなぞった物体を作り出すのである。
1枚の写真のなかでコンクリート上に干からびた果物の皮の形状は、合成の作業を経てシャツを飾るフリルのように見えたため、作家はオレンジ色の布で襞状の重なりを作ってその形状を実体化させた。これを単純に、写真イメージの彫刻化だと言っていいだろうか。この作業の目的は、この実体物をあらたに写真に撮影するためだというのだから、実際にはこう言い直すべきだろう。高木は自らのデジタル合成写真に対して、手作業による実体化をもって介入し、データ操作の虚の中に勇敢にも実体としての根拠を据え付けようとしている、と。
そうして取り直した写真を、さらに油絵具で板に描き写す。この手作業の連鎖をもって高木の写真作品は完結をみるという。
デジタル合成写真という[穴]のために、彼女は像を実体化してそれを満たそうとする。実物に作り直した像を、写真家は再度撮影する。その写真を出力するとき、デジタルプリンターのプリントにとどまらず、高木はプリントを油彩画に描くのである。出力された写真をさらに彫刻化して、油彩のパネルにするとき、絵は写真を映しだす鏡になるのだろうか。会場で確かめたい。


▊高木こずえ たかぎ・こずえ ▊
1985年長野県生まれ。2007年東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。2015~2016年公益財団法人ポーラ美術振興財団在外研修員としてアメリカに滞在。現在、長野県在住。
主な個展に2014年「琵琶湖」(キヤノンギャラリーS、東京)、2013年「琵琶湖カレイド」(AKAAK、東京)、2012年「高木こずえ写真展-SUZU-」(諏訪市美術館、長野)、2011年「SUZU」(ホクト文化ホールギャラリー、長野)、「SUZU」(TARO NASU、東京)、2010年「第35回木村伊兵衛写真賞受賞作品展高木こずえ「GROUND」「MID」」(コミカミノルタプラザギャラリーC、東京)など。主なグループ展に2015年「豊川ならではの現代美術」(豊川市桜ヶ丘ミュージアム、愛知)、2014年「諏訪 -この土地と人へのまざざし- 」(諏訪市美術館、長野)、2011年「ネクスト:信州新世代のアーティスト展2010」(長野県伊那文化会館、ホムト文化ホール(長野県県民文化会館)、長野)、2009年「VOCA展2009現代美術の展望 – 新しい平面の作家たち」(上野の森美術館、東京)など多数。
http://cozuetakagi.com/
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(左)「insider」2006年|lambda print with acrylic
(中)「ground」2009年|type C print
(右)「琵琶島」2014年|inkjet print