変成態―リアルな現代の物質性 vol.1 中原浩大


photo: Viridian Adaptor + Kodai's Morpho Ⅱ, 1989, wool, plywood, dimensions variable

撮影: 山本糾, Courtesy of Toyota Municipal Museum of Art, (C)Kodai Nakahara


2009年5月17日(土)~ 5月26日(水)

Exhibition view



異物感に溢れショートした場

天野一夫


この展覧会を始めるに当って、初出以来、20年ぶりに一つの作品を召喚し、展示したい(一度のみ1990年に形を変えて兵庫県立近代美術館で展示)。

今回作品《ビリジアンアダプター+コウダイノモルフォⅡ》は中原浩大の代表作であるばかりでなく、これまでの「彫刻」の歴史の中で、一つのターニングポイントであったように記憶する。それ以前のもの派、そしてポストもの派と呼ばれた中にあっても、中原の作品をある驚きをもってわれわれは見ていたものだ。
イスの上の編み物でできた手袋状の端に腕を突っ込み、そこを起点にして、あろうことかその異質な物体が延々と当時のギャラリー(1989年・村松画廊)の床全面に拡がっていき、その末端では半ば赤く塗られた巨大な球形が二つゴロンと横たわる…..。極私的な妄想が現実化したかのような、子供じみていてワイルドなイメージが当時のわれわれの眼に焼きついている。その後、一回しか展示されたことのないこの作品は、若い世代にとっては伝説的なものにもなっている中原の希少な造型作品なのだ。

身体性と直接むすんで、延々と伸びていくようなその動的な感覚。それはこれまでの「彫刻」の一つの堰を切ったようなものだ。それも当時の中原の他の作品と同様に、異質な物質どうしが暴力的なまでに接合されて異物感をたたえている。

さらにここには「彫刻」と言うには、床に描かれた紋様はある図を形成していて絵画性との共犯関係も見えてくる。そして融通無碍なひとつの庭園的な場さえ立ち上がってくる。
素材へのアウラから開放されて、自在に素材をショートさせていく自在なスタンス。そして様々な意味で異物感に溢れながらも「彫刻」性の末端に半ば居るようなこの作品を、この現代の造型言語の変化をかんがえようとするこの展覧会の起点に迎えたいとおもう。大きさ、素材、イメージ等の既存の規範から逸脱した新たな「彫刻」として登場した中原浩大の作品こそが、現在から見るに、一つの大きな造型史のポイントになっているようにおもわれるからである。その後のわれわれの時代の物の変転ぐあいによく見合ったものがここには先取りされていたのではないか。今一度、現在形の作品としてここに立ちあってみたい。

▊中原浩大 なかはら・こうだい▊
1961年岡山県生まれ。京都市立大学彫刻科助教授。現在、京都市立大学彫刻科助教授。近年の活動では、個展に2001年「テーマ展示中原浩大」(豊田市美術館、愛知)、グループ展に2005年「景観-もとの島-」(せんだいメディアテーク、宮城)、2003年「あるサラリーマン・コレクションの軌跡」(周南市美術博物館、山口)、2002年「ロストワールド -記憶の遊園- 岡崎和郎/小沢剛/田中功起/中原浩大」(豊田市美術館、愛知)、2001年「版画工房ノマルエディション展 NOMART01」(海岸通ギャラリーCASO、大阪)、2000年「プラスチックの時代| 美術とデザイン」(埼玉県立近代美術館、埼玉)など。