複合回路 vol.5 接触領域―青山悟


photo: Glitter Pieces #41(NIKA Natives), 2010, Embroidery with metalic and black thread on polyester, 20×28cm

撮影: Kei Miyajima, (C)AOYAMA Satoru, Courtesy Mizuma Art Gallery


2010年11月13日(土)~12月18日(土)

Exhibition view

反発と共感の歯車

高橋瑞木


 青山龍水(1905~1998)、洋画家。絵を描くことがこの上ない喜びだった青年時代、彼は画家を夢見た。しかし寺の養子だったため、将来は僧侶になることが既に約束されていた。だが、画家への道を諦めることができず、育ての親に無断で東京芸術大学の前身である東京美術学校を受験し、合格。画家への一歩を踏み出す。第二次世界大戦中は従軍画家として戦地に赴き、風景画を制作。戦後は二科会会員として活躍。とりわけ愛らしい顔の少女が登場する作品群が「抒情的」と評価された。
青山悟(1973~)。現代美術家。幼いころから祖父が描いた洋画に囲まれた環境で育つ。高校からロンドンに渡り、90年代にダミアン・ハーストを始め、多くの現代美術家を輩出したロンドン大学ゴールドスミスカレッジに入学。テキスタイル学科に入り、女性の学生が大多数を占めるなかアジア人の男性というマイノリティとして、織物、編み物、刺繍を学ぶ。その後 アメリカのシカゴに渡り、シカゴ美術館附属美術大学で修士をおさめる。2000年代初頭に工業用ミシンによる刺繍で友人や家族といった身近な人々のポートレートや、身の回りの風景を制作し、注目を浴びた。最近は社会主義者でありアーツ・アンド・クラフト運動の提唱者のウィリアム・モリスの言葉を引用しながら、高度資本主義社会における芸術の可能性を模索している。
戦争を境に心象風景を描くことに没頭した画壇所属の祖父。グローバル経済の危機の時代に芸術家の役割を問いかける、西洋で美術教育を受けた孫。異なる時間軸に正反対の道を歩むふたりが、芸術という共通項を合わせ鏡に対面するとき、反発と共 感の歯車がゆっくりと回転を始める。

 

▊青山悟 あおやま・さとる▊
1973年東京都生まれ。1998年 Goldsmiths College, University of London, BA Textiles, Visual Art Department。2001年 The School of the Art Institute of Chicago, MFA Fiber and Material Study Department。足踏みの工業用ミシンを用いて、風景、イコン、メディアに流通するイメージなどを精巧に刺繍する。ファインアートと工芸、手工業と 機械工業、イマジネーションとアプロプリエーションといった二項対立の制度に自分の作品によって問いを投げかけながら作品を制作している。今回は従軍画家であり、戦後は洋画家として活躍した祖父の作品を参照して作品を制作する。

(左)「White horse in the studio」 2008, ポリエステルに刺繍 46.8×50.8cm 撮影:宮島径, (c) AOYAMA Satoru, Courtesy Mizuma Art Gallery
(中)「Glitter Pieces #1」 2008 ポリエステルにメタリック糸と黒糸で刺繍 17.4×23.2cm 撮影:宮島径, (c) AOYAMA Satoru, Courtesy Mizuma Art Gallery
(右)「東京の朝/Good Morning Tokyo」 2005, ポリエステルに刺繍 42.5x59cm 撮影:木奥恵三, (c) AOYAMA Satoru, Courtesy Mizuma Art Gallery

●協力:ミヅマアートギャラリー、高橋コレクション