αM+
上:《lung B 》2026年
下:《マリモ旅行》2024年–
撮影:長野聡史
デザイン:三橋光太郎
予告
αM+ vol.3

上村卓大 息をする/ように

Takahiro Kamimura: I breathe / as IF I breathe
2026年3月7日(土)-3月28日(土)
12:30–19:00 / 日月祝休 入場無料
オープニングレセプション
3月7日(土)18:00–
アーティストトーク
3月28日(土)17:00–18:30
上村卓大、沢山遼(美術批評)

αM+は、1988年の設立から続くゲストキュレーターによる年間企画と並走する形で、gallery αMが2019年に立ち上げたもうひとつの企画です。過去には近年のアートコレクティブといわれる様々な形態の動向を受けて、「国立奥多摩美術館」「わたしの穴 美術の穴」の2組を紹介しました。その後、馬喰町からのスペース移転に伴い休止していましたが、2026年より隔年で1本の展覧会を開催していきます。本企画では、αMプロジェクト運営委員会が以下のような意図をもとに作家を選定し、個展として紹介します。

・「継続的」で「地に足をつけた」活動を続ける作家(世代は問わない)
・過去にgallery αMで発表経験のある作家(その限りではない)
・上記を踏まえて、運営委員会/gallery αMがいま見せたい作家

大学は、卒業後の活躍を約束する養成所ではありません。社会において自分の造形、自分の方法を組み立てていくための基礎を伝え、考える場所です。結果としてすぐに活躍のできる卒業生もいます。それも大事なことですが、その基礎である自身の造形の体幹をつかみ、問い続け、どのような状況でも制作を続けていける。そういった人材を育てる場所であることが大学の目的ではないかと考えます。αM+は、美術大学が運営するギャラリーとして、以上のような考えに基づいてリスタートします。

αMプロジェクト ディレクター 冨井大裕

作家テキスト
息をする/ように
上村卓大

福岡に生活を移して十年余りになります。今は、自宅から車で一時間ほど離れた、筑豊のボタ山のそばに工場を構えて、仕事と制作をやり繰りしています。電車やバスでのアクセスがとても悪いところなので、仕事以外で顔を合わせるのは、犬の散歩で通りかかる近所のお年寄りぐらいです。 
 ともあれかくもあれ、日々の生活の中で、〈制作〉が二の次三の次になるのはいつものことです。むしろこの年齢になると、さまざまに束縛された状況の軋みがあるからこそ、そこに〈自由〉を見出そうとする〈制作〉のような行為が可能なんだとも思っています。
 自分が思い描く〈彫刻〉のかたちにとって〈自由〉であることはとても大きな課題です。それは、好き勝手やることとも、声を上げることとも少し異なります。強いて言えば、声を出している時には忘れてしまっている、息をするようなことから始められるかどうかに関わっています。あえて息をすることのぎこちなさと同じように、自分にとって〈制作〉とは、わざわざそうしないことには起こり得ない、白々しくて不自然な出来事なのです。
 少し前に発表した、両替機を使った作品や、野菜や果物を使った作品も、そういう意味では嘘みたいに思えることから始まっています。両替機の作品では、鑑賞者が両替(等価交換)をする度に、その彫刻(両替機)の重さが少しずつ吐き出され、やがて蒸発していきます。野菜や果物の方は無人販売所のかたちをとっており、壁に留め置かれたレリーフのボリューム(色や形)を担うそれらが、いくらかの百円硬貨と等価交換され、おそらく食材になっていきます。起こっている出来事は普段と変わりないことですが、別の視点からは、まるで自然現象を拡大縮小したり、物事の変化を促成したり抑制したりして得られるような個別の様相が見えてきます。言い方を変えれば、〈制作〉の面白さは、この場所を透明に見せている〈今〉に、不透明な区切り(タイミング)を入れることのように思います。
 今、用意している底の抜けた二つの容器《lung A,B》も、区切り(タイミング)の産物であるのは間違いないと思っています。しかし、これがどこを起点に計画されたのかという明確な由来はありません。空間的には開いているけれど、視覚的には覗くことのできない閉じられたボリュームの大きさは、形態の問題に限らず、自分自身の金銭的そして時間的制約が下敷きになっているのは明らかです。オーバル状になった上からのシルエットは、かまぼこのような半円形の天井材の型を再利用し、円形に繋げて横に倒したもので、積み上げられた二つの高さもそれぞれの型の大きさに起因しています。また、制作を始める段階で、この作品がgallery αMの展示室に入りきらないことも分かりました。結果として部分的にダミーで代用し、押しこめられたものが一旦ここでの決着となります。
 この作品を成り立たせるいろいろとチグハグで他律的な条件に、始まりや終わりがあるようには思えません。改めて自分自身も変数のひとつなんだと実感します。一方出来事は、まるで逆行するスティックボムのように一息で与えられていたとせよ、と言いたげに見えます。

上村卓大Takahiro Kamimura

1980年高知県生まれ、福岡県在住。2005年武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻彫刻コース修了。2008年同大学院博士後期課程単位取得退学。主な展覧会に、2025年個展「見えているものと食べたらなくなるもの」art space tetra(福岡)、瀬戸内国際芸術祭2025『瀬居島プロジェクト SAY YES』」旧瀬居島中学校(香川)、2024年「福岡アジア美術館アーティスト・イン・レジデンスの成果展 周縁からはじまるArtist Cafe Fukuoka(福岡)、2020年「発生の場」佐賀大学美術館、2018年「スーパーローカルマーケット」九州芸文館(福岡)、2014年「Under 35 上村卓大展」BankART Studio NYK(神奈川)、2009年「変成態―リアルな現代の物質性 vol. 3 泉孝昭×上村卓大|『のようなもの』の生成」gallery αM(東京)、2007年個展「夜景と食卓」村松画廊(東京)、2006年個展「いいなづけ」(同)、2005年個展「TOWN WORK」(同)がある。

 

(左)
手前 《portal》2024年|ファクス(NTTFAX T-360)、電話回線、感熱紙|サイズ可変
奥 《[ex] change》2024年|両替機(BOSTEC BX-102、架台)、百円硬貨| H1350×W460×D450 mm
撮影:長野聡史

(中)
《KMC_001 (mind set) 》2024年|FRP、ステンレス、塗料| H960×W2370×D645 mm
撮影:長野聡史

(右)
《honesty box (cucumber ginger lemonade) 》2025年|ステンレス、コインセレクター、胡瓜、生姜、レモン|H785×W720×D195 mm
撮影:長野聡史
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