1999年10月30日~11月20日
東島毅
東島が作品を発表するようになったのは、おおよそ1990年代の半ばからである。したがって、今回の個展までの間、わずか5年あまりの年月しか経てはいないことになるが、そこにはある変化が見出せる。
われわれが見ることのできた初期の絵画では、絵画的(ペインタリー)な線や面が描かれ、それらが絡み合うことに力点が置かれていた。そして、これらの要素に対して、それを抑制するかのような擬幾何学的形状が施されていた。これによって、二つの要素が対照し、かつ後者は画面全体のアクセントとしても作用していた。この構成法は、新表現主義の文脈において眺めることができよう。そしてさらには、奇異に思われるかもしれないが、アッサンブラージュの方法の一部が絵画化されていると見なすことができる(藤枝、東島作品の解説『グラフイケーション』76号、1994年を見よ)。
しかし、東島の絵画はこれより、変化を遂げる。絵画的な性格は残されているものの、際立つことはない。代わって、対照性の方法がより顕在化してくる。とは言え、それは以前のように同一表面上における対照性ではなく、面的な背景と線的な前景との対照性を浮かび上がらせる。この場合、ときには、単に背景の上に線を施すという単調化の危険を孕むが、実は絵画という平面における構築=表現が追求されているのである。
東島の絵画は、純粋に培養されているのではない。そもそも、そうしたものはどこにも存在しないだろうが、しかし彼の変化はきわめて内発的であり、このことはいわゆるポストモダニズムの絵画流行の終焉後の、わが国の絵画の艮き特徴になりつつある。