2004年6月21日(月)~6月30日(水)
写真:2003 セラミック 6.8×12.6×7.7cm (C)Yoshio Sakagishi
さかぎしよしおうの作品を前にすると、まずその気の遠くなるような作品制作に驚かないわけにはいかない。磁器土を一滴一滴スポイトでたらしながら、「粒」の集積によって、幾何学的な形や、建造物のような形に仕上げる。その後、形がつくられたら、三度窯に入れられる。この作業は、どの陶芸家であっても、磁器土どうしがくっついてしまったり、割れてしまったりする、大変困難な作業であるのだ。こうした厳しい工程を乗り越えた、約半分の作品(残り半分は捨てられてしまうそうだ)は、手のひらで、すっぽりと覆うことができるぐらいの、お城のようになる。
さらに、作品をよく見ると、縦方向に「粒」が重なっているだけでなく、横にも個であった粒どうしがつながりあっていることがわかる。これは、さかぎし自身が意図したものではなく、自然にそうなったそうだ。10年も前のさかぎしの言葉であるが、今でも共通することがあるように思えるので、少しだけ紹介したい。「私がつくりたい形があり、しかし又素材がなりたい形がある。“成るようにする”と“成るようにしかならない”を大切に制作したい」
当時は石膏によって、造形作品を制作していたさかぎしであるが、今磁器土も同様自然の素材である。素材と対話し、対峙する。土を感じながら、土に対してゆっくりと自分の気持ちを伝えながらの制作態度。新作を含む、さかぎしの彫刻作品を2004年度αM、一人目の作家として紹介する。(武蔵野美術大学 芸術文化学科3年/戸澤潤一)