『未来のニュアンス―スペースダイアローグ』 vol.1 近藤正勝

2005年5月23日(月)~6月4日(土)

photo:APPREHENSIVE PASSAGE, 2004 (C)Masakatsu Kondo


ネオランドスケープ 見られえぬ風景との対話


岡部あおみ

ロンドンで美術学校を卒業し、17年間活動している近藤正勝は、これまで崇高な山やみずみずしい森林をテーマにしてきました。2003年にアクリルから油彩にメディアを変え、これまでとは異なる芳醇な絵画に挑んでいます。油彩はまだ日本で発表の機会をもっていません。近藤の油絵の新作を日本で初公開することになります。遠い記憶と歴史の層から立ちあがる名づけようのないランドスケープ。果てしのない奥行きと燃えるような筆致に、奇跡かと固唾を飲む油絵の生命が宿っています。
最近の英国の絵画の状況は、他の国に比較しても大変興味深い円熟した境地に達しています。現代英国の絵画の主潮のただなかで、ピーター・ドイグなど多くの成熟したペインターとほぼ同世代で仕事を開始した稀有な日本人作家として、新たな関心がわきおきることでしょう。
大型の油彩は輸送が高価になるため、日本でこうした潮流をきちんと紹介する企画はまだ立てられたことがありません。日本で主流となっているスーパーフラットな具象や、ぼんやりした形態による抽象、カラフルな身体的な抽象絵画ともまったく異なる、むしろ伝統的な筆致で描かれた新たな油絵です。海外で最近台頭しているこうした熟したペインティングの状況を「ネオランドスケープ」と呼んでもいいかもしれません。ささやかですが、この企画をきっかけに、見ることの醍醐味を通して、底知れぬ絵画の可能性を開示できればと思います。