αM+ vol.2

わたしの穴 美術の穴|地底人とミラーレス・ミラー

αM+ vol. 2 My Hole: Hole in Art: Subterraneans and Mirrorless Mirror


パート1:地底人
2022年 1月15日(土)〜2月12日(土)
キュレーション:高石晃
参加アーティスト:高石晃 高山登 ニコライ・スミノフ

パート2:ミラーレス・ミラー
2022年 2月19日(土)〜3月19日(土)
キュレーション:石井友人
参加アーティスト:雨宮庸介 石井友人 大川達也 敷地理 多田圭佑 谷口暁彦 津田道子 藤井博 三宅砂織

[展示替えに伴う休廊:2/13-2/18]
13:00〜20:00 日月祝休 入場無料

新型コロナウイルスの影響により、会期や開廊日時の変更、入場制限等の対応を検討する場合がございます。詳細および最新情報は、ウェブサイト、SNS等をご確認ください。

協力:Maki Fine Arts、SNOW Contemporary、TARO NASU、WAITINGROOM
機材協力:ARTISTS’ GUILD

(English info below)

デザイン:岡﨑真理子


「地底人とミラーレス・ミラー」

石井 友人・高石 晃

「わたしの穴 美術の穴」はアーティストの石井友人と高石晃によるアート・プロジェクトです。「地底人」と「ミラーレス・ミラー」という二つのテーマは、穴というモチーフを巡るプロジェクトでの7年間の活動を通じて浮上してきたものです。日常空間に遍在する穴。穴を実在するものとして認識することは出来ません。そこには何もない。しかし、不可思議にもそこに穴は存在していると感じます。このアンビバレントな経験を通して、私たちの知覚や記憶、情動や想像力は駆動されている。そしてそのことの内に、人間という認識の枠組みを持った存在、そして、美術という制度における人間的営為の根源性があるのではないか、私たちはそのように解釈しています。
 「地底人」と「ミラーレス・ミラー」は、穴のこの両義的な性質が人間に与える変質のプロセスを、下方に貫入されていく穴と、水平的横方向に交通していく穴の二つの方向性でもって捉えようとしたものです。地面へと下方に穿たれた穴に対して、人は自らを支える基盤である大地とその下に広がる不可視な世界への想像力の投射を行うでしょう。一方、地上における水平的な穴には眼球やカメラのように、可視的な模像イメージを生み出す構造体があり、そこでは特異なイメージの脱情報化と再構築が推し進められています。
 「地底人とミラーレス・ミラー」ではこのような穴の垂直性・水平性の孕む異質なものたちが——潜在的なもの/現象的なものとして——分離し、そして時に混合します。現在、私たちが住う地球環境の中で、私たちは新たな神話的な想像力を持ち始めているでしょう。そして、著しく変化する情報環境において、私たちはイメージと物質の新たな関係性を模索しています。本展「地底人とミラーレス・ミラー」は会期を二つに分け、私たちをとりまく環境の変容と、その環境と私たちの新たな関係の仕方を、潜在・現象の二つのあり方として表出しようと試みます。

パート1:地底人(キュレーション:高石晃)

 「地底人」では、私たちの足元の大地に穴を穿ち、地表の下に隠された世界を探索します。

 高山登が1968年前後から開始した表現実践は、一見要素還元的な形式をとっていたとしても、一貫して事物がその内部に抱え込んでいる記憶、歴史を志向しており、同世代の日本の作家よりもむしろヨーゼフ・ボイス等の実践との同時性をもっていました。その独自な物語性は、初期作の多くが「地下動物園」と名付けられていたことからもわかるように、この世ならざる地下世界への想像力に根ざしたものです。作品の構造、素材などには監獄や処刑台、強制労働など、近代国家による暴力が暗示されており、高山にとって地下世界は抑圧されてきた死者=他者たちが潜む場所として措定されていたのかもしれません。

 元来、大地に穿たれた穴や洞窟が異界としての地下世界に繋がっているという物語は、普遍的な神話構造として世界のあらゆる地域にみられます。ロシア出身の地理学者でアーティスト、キュレーターでもあるニコライ・スミノフは辺境に追いやられてきたアニミスティックな表現、科学的調査の最中に記録された神秘的な出来事、近代史からこぼれ落ちた不可解な歴史的事実などの中に現れる地下世界の表象を調査、研究しており、スミノフはそれらの一見おぞましい表象こそが現代の神話的物語であり、現代における人間と地球内部の力との関係を示すものだと考えています。

 それらの地下に蠢く様々な形象は、私たちが表層の世界が覆い隠している潜在的な領域を知ろうと試み、不可視の地下世界へと意識を投げかけることで現れてきたものです。「地底人」ではそのような地下世界へ向けられる想像力が私たちの生を下支えしている、不可欠な基礎であると位置付け、人間と大地=地球の関係が再度問い直されている現在における、subterraneans(地底人)としての他者の姿を構想します。

パート2:ミラーレス・ミラー(キュレーション:石井友人)

  ——この見えない巨大な鏡、すべてを写し出すかに見えるその明るい表面を通って、鏡の底へ降りてゆく。——
  宮川淳『鏡・空間・イマージュ』1967年

 鏡の向こう側を示唆する魅惑の物語は、歴史上数多に存在します。例えば、鏡の国のアリスやナルシスの物語のように。しかし、鏡の明るい表面と底、それは現実にはあり得ない二重の空間に思えます。

 私たちは社会生活を過ごす中で、現実と虚構、自己と他者、人間と自然を切り分ける認識を徐々に与えられていきます。「鏡の国」とは異なり、それが従来の鏡の役割とも言われています。

 そして現在、私たちは自己イメージを孕んだありとあらゆる模像(鏡、ショー・ウィンドウの反映、光学装置が生み出す複製イメージ、そしてスマホやデジタルデバイスにおけるミラーリングやミラー・ワールド)の世界に加速度的に取り囲まれ、同時的に世界と接しているにも関わらず、何故か事後的に世界が与えられているように感じることが少なくありません。

 「ミラーレス・ミラー」に参加するアーティストは、そのような現在の情報環境を積極的に引き受けながら、諸メディアにおける鏡像的構造を逆手に取り、リバース・エンジニアリング的に私たちを「非-わたし」の方向へ逆流させます。

 このさかしまが反映される展示空間では、鏡が物理的・空間的・心理的「穴」となり、本来存在し得ない二重の空間——鏡の明るい表面と底——の真っ只中に、私たちを誘います。そこでは「わたし」という認識を構成するのに不可欠な自己イメージが変質し、無数の模像に与えられた意味も大きく変調をきたすでしょう。

  「ミラーレス・ミラー」は、人間を切り分ける隔たりを再交通させ、分化(鏡)なき鏡の経験を生み出します。


▊わたしの穴 美術の穴 わたしのあな びじゅつのあな▊
1970年前後の日本美術史をリサーチすることを主眼に石井友人、榎倉冴香、地主麻衣子、高石晃、桝田倫広により2014年に発足。2015年にメンバーによるグループ展「わたしの穴 美術の穴」開催。2016年に『わたしの穴 美術の穴』冊子出版。以後、石井友人と高石晃によるアート・プロジェクトとして、2018年に藤井博個展「わたしの穴 21世紀の瘡蓋」のキュレーション、2019年に『わたしの穴 21世紀の瘡蓋』の冊子出版及び、榎倉康二、高山登、藤井博の三人展「不定領域」、石井友人個展「享楽平面」、高石晃個展「下降庭園」のキュレーションを行う。

(左)大川達也《ミラーレス・ミラー》2017年|ミクストメディア|サイズ可変
(右)ニコライ・スミノフによるプロジェクト「死、不死、そして地下世界の力」より、イリナ・フィラトヴァ《永遠の地下美術館》2014年|4チャンネルビデオインスタレーション

Part1: Subterraneans
January 15, 2022(Sat.) - February 12, 2022(Sat.)
Curation: Akira Takaishi
Participating Artists: Akira Takaishi, Noboru Takayama, Nikolay Smirnov

Part2: Mirrorless Mirror
February 19, 2022(Sat.) - March 19, 2022(Sat.)
Curation: Tomohito Ishii
Participating Artists: Yosuke Amemiya, Tomohito Ishii, Tatsuya Okawa, Osamu Shikichi, Keisuke Tada, Akihiko Taniguchi, Michiko Tsuda, Hiroshi Fujii, Saori Miyake

[Closed due to exhibition change: Feb. 13 - Feb. 18]
13:00-20:00 Closed on Sun., Mon., Holidays.
Entrance Free

We may consider changing the exhibition period and opening hours due to the effects of COVID-19. Please refer to our website and social media for details and the latest information.