開発の再開発 vol.5

奥村雄樹|我を忘れる身構えの手解きの跡形(我々は数多の知る由もない先行きの面影に湧き立つ)

Redevelopment of Development vol. 5 Yuki Okumura: Aftermath of Hands-on Sessions on Various Nonactive Postures to Keep Oneself Somehow Carried Away (We Stand So Many Ghosts of Unknown Chances)

2024年4月13日(土)~6月15日(土)
April 13, 2024(Sat.) - June 15, 2024(Sat.)

12:30〜19:00
日月祝休 入場無料
※6/2(日)は市ヶ谷キャンパスのオープンキャンパスのため12:30〜19:00で開廊いたします
12:30-19:00
Closed on Sun., Mon., Holidays.
Entrance Free

ゲストキュレーター:石川卓磨(美術家・美術批評)
Guest Curator: Takuma Ishikawa (Artist, Art Critic)

レセプション:4月13日(土)18:30〜
Reception: April 13(Sat.) 18:30-

協力:
平和紙業株式会社、株式会社竹尾、MISAKO & ROSEN

武蔵野美術大学 鷹の台キャンパスにて(2024年3月|撮影:神祥子)


我々は数多の知る由もない先行きの面影に湧き立つ|We Stand So Many Ghosts of Unknown Chances

http://yukiokumura.com/so_many_ghosts_of_unknown_chances.html

出展者:藤本紗帆, 福島利南, 濱田浩嵩, 畠山結衣, 侯珝言, 一条萌笑, 池田卓也, 伊佐百加, 石原清花, 岩井悠辰, 岩下大成, kanaho, 川合沙羅, 清原啓, 近藤かの子, 児山 拓大, ロ テンセキ, めのう, 森田真, 森谷颯太, 大木花帆, 奥村雄樹, 小山田開, 朴愛里, poji-nega, 李競然, RisA, 詩霖, 品川玲於奈, 鈴木小麦, 鈴木七世, 鈴木調, 高田満帆, 高木健汰郎, 上田純也, 氏家芽紅, Zhai Jiayu

Participants: Saho Fujimoto, Tonami Fukushima, Hirotaka Hamada, Yui Hatakeyama, Hou Xuyan, Moe Ichijo, Takuya Ikeda, Momoka Isa, Sayaka Ishihara, Yujin Iwai, Taisei Iwashita, kanaho, Shiyara Kawai, Kei Kiyohara, Kanoko Kondo, Takuhiro Koyama, Tianshuo Lu, Menou, Makoto Morita, Sota Moriya, Kaho Oki, Yuki Okumura, Kai Oyamada, Aeri Park, poji-nega, Ri Kyouzen, RisA, Shilin, Reona Shinagawa, Komugi Suzuki, Nanase Suzuki, Shirabe Suzuki, Maho Takada, Kentaro Takaki, Junya Ueda, Megu Ujiie, Zhai Jiayu

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我々は数多の知る由もない先行きの面影に湧き立つ

奥村雄樹

「僕はこのワークショップを制作に行き詰まり展覧会に気後れし自分の無能さに落ち込みがちな人(僕自身を含む)が些細な行為も制作的(詩作的)になりえるしホワイトキューブは人が生を送る部屋の一様式にすぎないし才能はむしろ阻害的である──世界はすでに豊穣でどんな瞬間も奇跡なので作り手は作為を捨てて所与の状況とただ戯れればよい──ことを理屈ではなく身を以て習得できる場にしたい。そのために1950年代から70年代にかけてコンセプチュアル・アートをはじめ実験音楽やフルクサスやポストモダン・ダンスなど諸分野で培われた真に語義的な意味で「パフォーマティヴ」な手法──特別な技術や感性を持たず専門的な訓練も受けていない者が簡潔なルールの束に黙々と従いながら特定の作業をやり抜くこと──に孕まれた可能性を歴史的な既存作の再演および各自の新作の試行を通じて掘り起こし突き詰めていく。上記の傾向に該当しなくても単にコンセプチュアル・アートやパフォーマンスに興味がある人も歓迎。
 個人的な動機はふたつ。まず僕が近年アントワープ(ベルギー)のアカデミーや京都の美術大学で練り上げてきたカリキュラムが武蔵野美術大学の学生の皆さんの実践にどのように作用するのか見てみたい。そしてまた僕に展覧会の場として与えられたホワイトキューブ(gallery αM)が世界から切り離された特区ではなく世界の開かれた一部であることを露見させるにあたって僕ひとりでは角度が限られるので多くの人に取り組んでもらいたい(各自がただ各自であるだけで視点と立脚点は複数化し場から導き出される行為は多様化するから)。つまりは皆さんの力を貸してほしい。お願いします。」*

*武蔵野美術大学在籍者を対象とする春休み特別ワークショップ2024「コンセプチュアル/パフォーマティヴ──我を忘れる身構えの体得へ」募集要項より転載

「知る由もない先行き」に先行して考えることの遂行性について

石川卓磨

 次の奥村雄樹の展覧会はどんなものになるだろう。正直に告白すれば、「我を忘れる身構えの手解きの跡形(我々は数多の知る由もない先行きの面影に湧き立つ)」という魅力的な展覧会タイトルが示すように、「数多の知る由もない先行き」を、私が先取りすることはできそうにない。
 本展覧会では、いわば「キュレーション内キュレーション」として、個展の枠内でグループ展が開催される。参加するアーティストは、公募で集まった武蔵野美術大学の学生たち。彼らは、奥村によるレクチャーや「宿題・課題」に取り組んだ後、gallery αMで展示を行う。この展示には奥村自身もアーティストとして参加する。これはつまり展覧会という枠組みを超えて、教育的プログラムを開発するという、開発の多元性を開発する態度であり、それが奥村の開発の再開発だと言えそうだ。
 奥村は、コンセプチュアル・アートにおける「『芸術家の脱人物化』によって『世界の自己表現』をもたらす特異な『遂行性』」*1に一貫して関心を持ってきた。これは、コンセプチュアル・アートが属人的な技術を外して制作を構築する条件に由来している。この機械的あるいは匿名的な性格から生まれる帰結の展開として奥村の思弁的探究がある。例えば、先駆的なアーティストとして現代美術史で欠かすことのできない存在になりながら、匿名的な活動を貫いた河原温や、作家の媒介的・補助的な職能を持つ通訳やアシスタントにフォーカスすること。そのような人物を作品の対象として選び、一人のアーティストに帰属するはずの作品や発言に、複数の「制作者」の存在を浮かびあがらせる、あるいは主体の入れ替えをもたらす操作を行っている。
 再び展覧会タイトルに目を向けてみよう。この謎めいたタイトルを奥村のコンセプチュアル・アートに対する理解と重ねると、パラフレーズ的類似を確認できる。「我を忘れる身構え」を「芸術家の脱人物化」として理解すれば、「手解きの跡形」とは「世界の自己表現」にあたる。そして出展者の作品=「遂行性」を通して「世界の自己表現」を感じられるのだろうか。しかしそれでは「我を忘れる身構え」という前提と矛盾するだろう。つまりこの解釈では奥村の企みを単純化してしまう。結局「数多の知る由もない先行き」を先取りしようとするのは不可能だ。だから私は、キュレーターとしての不安や先入観を捨てて(我を忘れて)、一観客として何が起こるのかを素直に楽しみにする身構えを会得するという結論に至った。

*1 奥村雄樹「コンセプチュアル・アートの遂行性──芸術物体の脱物質化から芸術家の脱人物化へ」

https://www.artresearchonline.com/issue-2a

2024年3月10日アクセス

寄稿「遊戯痕–Task Traces」村山悟郎

以下のリンクよりお読みいただけます。

https://gallery-alpham.com/text/20143642/

▊奥村雄樹 おくむら・ゆうき▊
1978年青森県生まれ。主な個展に「彼方の男、儚い資料体」慶應義塾大学アート・センター(東京、2019)、「29,771 days –2,094,943 steps」LA MAISON DE RENDEZ-VOUS(ブリュッセル、2019)など。主な二人展に「奥村雄樹による高橋尚愛」銀座メゾンエルメス フォーラム(東京、2016)など。主なグループ展に「あいち2022」愛知芸術文化センター(2022)、「July, August, September」St. Apernstrasse 13(ケルン、2021)、「Un-Scene III」WIELS(ブリュッセル、2015)、「MOTアニュアル2012 風が吹けば桶屋が儲かる」東京都現代美術館(2012)など。ウィーンのSecessionで2025年2⽉に過去最⼤規模の個展が予定されている。

(左)《(ほぼほぼ)誰にでもバックストーリーがある》2023年|インストラクション|規模不定
*京都芸術大学大学院グローバル・ゼミ・スタジオ(U21)での実行風景|撮影:奥村雄樹
(中)《英国には地点が107と交点が888》2024年|場に現存する素材で構築された絵画|83.5×51cm
*20 Albert Road(グラスゴー)での設置風景|撮影:Patrick Jameson|提供:Cento|厚意:MISAKO & ROSEN
(右)《Casino Eefrew》2024年|名刺|5.5×8.5cm
*Etablissement d’en face(ブリュッセル)での設置風景|撮影:奥村雄樹|協力:Provence|厚意:MISAKO & ROSEN

アーティストトーク 奥村雄樹×石川卓磨