『未来のニュアンス―スペースダイアローグ』 vol.2 渡辺 豪+橋爪 彩

2005年6月6日(月)~6月18日(土)

photo上:「emo」, 2004, ムービー (C)Go Watanabe 
photo下:「仏製椅子」, 2004, 板に白亜地、油彩, 14.8×10.5cm (C)Sai Hashizume


シークレットガールズ up and down


岡部あおみ

出会いは予測不能な未知の出来事。
コンピュータで構造化された渡辺豪のあどけなく冷たい少女の上半身と橋爪彩が生み出す精緻な油彩の下半身

up
渡辺豪が創り出す漂白された3DCGのアンドロイドは、皮膚や髪の毛のディテールのすべてが、精巧であるがゆえにフラジャイルで透明なのだ。話し声はまるで、どこにでもいそうなリラックスした少女の肉声だから、なげやりなつぶやきが黒い瞳と唇のクールなシミュレーションを際立たせる。声と身体表象の乖離と合体。欲望とコミュニケーションの人工的な距離と密会が、ヴァーチャルとリアルを共犯させる。

down
黒いエナメルの真新しい靴を履く。その脚に、ストッキングのでんせんが走るとき、何かが微かに壊れる音を聞く。ツツゥーと起きるでんせんの突発事故は、一条の体液の流れのように忘れたころにやってくる。橋爪彩が描く、まっすぐに伸びた脚は、白いハイソックスと黒いストッキングの二重奏。ニュートラルな少女の脚線美と弾力性のある女の筋肉とのちょうど中間地帯に、不穏でたくましい性が棲んでいる。

渡辺豪と橋爪彩は通常、べつのさまざまな表現も手がけている。だが今回、見知らぬ二人の出会いを導くのは、シークレットガールズである。