『未来のニュアンス―スペースダイアローグ』 vol.4 鈴木明+山田正好

2005年10月17日(月)~10月29日(土)

photo上:「ワークショップ」, 2004, 第3回ベルリンビエンナーレ (C)Akira Suzuki 
photo下:「大移動」, 2005, 皮・鉄 (大)235x155x255cm, クロード・サムエル画廊 (C)Masayoshi Yamada


東のすみか西の人 ライフ・リ・リサイクル


岡部あおみ

ひとをすみかに招くとき、ホスピタリティが生まれる。ホスピタリティとは、永遠の旅人になった都会人をもてなす「ライフ・リ・リサイクル」究極の人生の癒しというシナリオだろう。旅のルーツに故郷はあるのか。ノマドのあなたに贈るホスピタリティの12日間。

<鈴木明 新聞紙の双子ドーム>
元マーガリン工場を改造したクンストヴェルケで、「ベルリン・ビエンナーレ2004」が開催された。その会場に5トンの新聞紙が運び込まれる。小学生とともに新聞紙のシェルターを作るためだ。建築批評、建築雑誌編集、サイン計画などを手がけている鈴木明は、セルフビルドの家を考案するアーティストでもある。世界各地にかならず存在するローカルでグローバルな新聞紙を使ったリサイクル・ワークショップ。身体とインタラクションする情報媒体がかもし出す風景は、未開とも、アフターワールド的ともいえるヴァナキュラーな世界を現出する。

<山田正好 四足物語>
パリに着いたのは1973年。バックパッカーの先祖ヒッピーが世界を旅する時代だった。ヤマダは当時、リュックを背負った奇妙な胎児の彫刻を作っていた。存在の根茎から滲み出てくる特異なオブセッションが、フランスの著名な精神分析医の眼にとまる。すでに今は亡き名医となったその人は、ヤマダの作品を買いつづけ生涯のコレクターになった。雑誌やポスターのコラージュ、古いアパートの窓ガラスや屋根裏に残されたタールの素材。生活と都市の残滓に生命が吹き込まれる。あくまでもひとのかたちを追い求めるヤマダは、ひとがひとになる前の前史、四足時代へと帰郷の旅を続けている。