『未来のニュアンス―スペースダイアローグ』 vol.6 出月秀明

2005年12月12日(月)~12月24日(土)

photo:アランの毛糸帽子会議, インスタレーション, 2004, 焚火、椅子, ギャラリーHIRAWATA、神奈川 (C)Hideaki Idetsuki


アランの毛糸帽子会議


岡部あおみ

ドクメンタではじめて女性の芸術監督となったカトリーヌ・ダヴィッドが、出月秀明をドイツのアーティスト・イン・レジデンスの審査でバックアップした。彼がシュトゥットガルトで実現したのは、床面に近いところでプロペラが二機ゆっくり回り、その上部空間に設置された楕円形の円周線路をおもちゃの電車が逆回りに動きつづけるインスタレーション。宙に浮いた機械に支えられて絶え間なく動き続ける乗客、機械と人間のはかなく不確かな関係に、現代社会が映され日本が浮上する。カトリーヌ・ダヴィッドとヴェネチアで会って話をしていたとき、とてもいい日本の作家がいるので、ぜひ会ってみてと紹介されたのが出月秀明だった。
少年時代からさまざまな土地に「移住」し、その「周囲」を回り、最北端などの「端」まで歩いたという。2000年、26歳のときにアイルランドの西端にあるアラン諸島のイニシュモア島を徒歩で一周したのも、人間が生きる土地をつねに求める彼の自然な歩みの軌跡のためだ。そして出会ったのが、素敵な手編みの毛糸の帽子。「虹のかけら」と呼ぶその帽子を友人や恩師にプレゼントし、それを被って会議を開くことを計画した。
今回の個展は、すでに2回開かれている「アランの毛糸帽子会議」の第3回目。クリスマスも間近な京橋のギャラリーに、燃え続ける火と暖かい暖炉が現れるかもしれない。出月秀明のたっての願いで、デザイナーの中村好文が、ソフトな触感の椅子や机などの家具とともに、かっこいい暖炉を特別出品してくれることになった。あなたや訪れる方々と暖炉の前で語り合うために、つねに会場にいたいと出月秀明は楽しみにしている。