『生命の部屋』 vol.4 黒沢麻衣子

2006年11月20日(月)~12月2日(土)

photo:いす, 2002 (C)Maiko Kurosawa


第4回「αMプロジェクト2006」のアーティストには黒沢麻衣子(1979年群馬県生まれ)を選んだ。
2004年に武蔵野美術大学大学院を修了。大学では油絵を専攻していたが、近年はオブジェやインスタレーションを芸術表現としている作家だ。
黒沢は三次元の事物を絵に置き換えようとすると、どうしても事物の裏側まで描きたいという欲求が生まれるという。事物の存在そのものを平面に描くことの困難さからか、黒沢は現実の空間に作品を作ることになる。それが、オブジェを作るきっかけだったようだ。それは目に映る現実世界のすべてのものを確認という形で手に入れたいという欲望とも言える。しかし、当然のことながら、現実世界のすべてが手に入ることはない。叶わぬ夢を追い続けることになる。私たちは世界をどのように見ているのか、またどのように見えるのか。民族、宗教、教育などによって同じ世界であっても、あきらかに違って見えているはずだ。またそれは、個人のレベルでも原体験や原風景で違って見えるだろう。黒沢が見ている現実世界は、私達が見ている世界とは異なるかもしれない。世界を我がものとするために、彼女は何を見、何を考えるのだろうか。
今回の「生命の部屋」というテーマを黒沢どのようにとらえるのか。また一方、現実世界を自分の世界に引き寄せて、どのような「生命の部屋」を引き出し創造するのだろうか。興味深いものだ。

加藤義夫