成層圏 vol.5

宮永亮|風景の再起動

Stratosphere vol. 5 Akira Miyanaga: Reactivating Landscapes

2011年10月22日(土)~11月26日(土)
October 22, 2011(Sat.) - November 26, 2011(Sat.)

12:00–18:00
日月祝休 入場無料
12:00–18:00
Closed on Sun., Mon., Holidays.
Entrance Free

ゲストキュレーター:高橋瑞木(水戸芸術館現代美術センター主任学芸員)
Guest Curator: Mizuki Takahashi(Contemporary Art Center, Art Tower Mito)

アーティストトーク:10月22日(土)16:00–17:00
宮永亮×高橋瑞木
トークイベント:11月26日(土)16:00–17:00
宮永亮×下道基行×高橋瑞木
Artist Talk: October 22(Sat.) 16:00–17:00
Talk Event: November 26(Sat.) 16:00–17:00
Akira Miyanaga × Motoyuki Shitamichi × Mizuki Takahashi

制作協力:内山泰義

《arc》2011年|マルチチャンネルビデオインスタレーション


あらかじめ失われた時間について

高橋瑞木

誠実な映像制作者は、時間によって拘束される。ビデオカメラで動画を撮影し、その素材を編集してゆく作業とは、撮影者が生きている時間をそのままマシンに吸収させてゆくことに他ならない。
だから、映像作品とは撮影者が自ら進んで搾取された時間を回復しようという試みの結果である、と仮定してみよう。
宮永は異なる場所、時間で撮影された個別の動画素材の形態上、あるいは意味上の共通項を見いだし、それを編集によって可視化しようとする。本展でもこうした分析や作業を経た映像作品を見ることができる。
しかし、完成された映像作品は編集の結果である以上、その編集のプロセスはノイズとして排除される。興味深いことに、映像には撮影された動画そのものの時間 は存在するが、それを編集した時の制作者が生きた時間は「無かったこと」になっているのである。いくつもの撮影動画を見返して、それを切り刻み、つなぎ、統合してゆく、それこそ撮影時間に匹敵するほどの長い時間は、映像作品においては、あらかじめ失われている。
宮永は、この映像作品につきまとうパラドキシカルな時間の絶対性に抗おうとする。その反乱のためのアジトが本展では組まれる。
おそらくそこから起動されるのは、大小さまざまなノイズに溢れた風景であるはずだ。なぜなら、それは宮永が自分の周りの世界に一方的な眼差しを注ぎ、任意の風景を切り取って組み合わせただけのしろものではなく、宮永亮という1人の人間が生きている時間が抜き去り難く存在する世界のありようだからである。

▊宮永亮 みやなが・あきら▊
1985年北海道生まれ。2009年京都市立芸術大学大学院美術研究科(修士課程)絵画専攻造形構想修了。自然の風景などを断片的にビデオカメラで撮影し、その集めた素材を吟味しながら掛け合わせていく手法で映像作品を制作していく。主な個展に2010年 「making」、2009年「Wondjina」(共に児玉画廊)など。

(左)《about the lights of land》2010年|HDビデオインスタレーション|撮影:表恒匡
(右)《Wondjina》2009年|HDビデオ|画像提供:児玉画廊

アーティストトーク 宮永亮×高橋瑞木

アーティストトーク 宮永亮×下道基行×高橋瑞木