トランス/リアル — 非実体的美術の可能性 vol.5
Trans / Real: The Potential of Intangible Art vol. 5 Atsuhiro Ito, Toshiya Tsunoda: Transmission / Sound
2016年10月29日(土)–12月3日(土)
October 29, 2016(Sat.) – December 3, 2016(Sat.)
11:00–19:00
日月祝休 入場無料
11:00–19:00
Closed on Sun., Mon., Holidays.
Entrance Free
ゲストキュレーター:梅津元(埼玉県立近代美術館主任学芸員/芸術学)
Guest Curator: Gen Umezu
アーティストトーク:10月29日(土)18:00–
伊東篤宏×角田俊也×梅津元
Artist Talk: October 29(Sat.) 18:00–
Atsuhiro Ito × Toshiya Tsunoda × Gen Umezu
オープニングパーティー:10月29日(土)19:30–
Opening Party: October 29(Sat.) 19:30-
ライブパフォーマンス:12月3日(土)17:30–18:30
Live performance: December 3(Sat.) 17:30–18:30
助成:アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
左|角田俊也《こめかみ録音》2010年 撮影 坂田峰夫|右|伊東篤宏 2016年
「トランス/リアル」は、絵画・彫刻の現在的な可能性を問う第一幕「トランス/モダン」3部作(第1回〜第3回)を経て、音、光、映像、身体を駆使して世界に向き合う構えを探る第二幕「ポスト/リアル」カルテット(第4回+第5回)を迎えている。世界を把握するために要請される媒体=メディウムは、情報の受け渡しの過程で必ず「ノイズ」を発生させる。「リアル」とは「世界の手ごたえ、世界の手触り」でもあり、その正体は「ノイズ」=「世界の肌理」である。「ポスト・メディウム」は、「ポスト・ノイズ」という刺激的な思考によって、より柔軟なロジカル・フレームへと変容する。
伊東篤宏と角田俊也。お互いを良く知る二人の組合せは、2014年のプログラム「Sound of the Real」に由来する(阿木譲=編「CON/cretism」スピンオフ企画)。翌年、「Sound of the Real 2」(志水児王関連イベント,ICC,2015)、「Sound of the Real 3」(『引込線2015』掲載)へと展開したこのコンセプトと、「トランス/リアル」を導いた「Trans of the Real」は、ともに、「“リアルな芸術”以後の芸術/Art After “Art of the Real”」(『引込線2013』関連イベント基調報告)から派生している。従って、「Transmission / Sound」においては、「トランス/リアル(=Trans of the Real)」と「Sound of the Real」がせめぎあう時空間が生成するだろう。
伊東篤宏が手がける、蛍光灯を改良した音具「オプトロン」には、置き型で遠隔操作する初期タイプから、ライヴ演奏仕様の手持ち楽器的スタイルまで、様々なタイプがある。初期型と楽器型が併用された2014年のライヴでは、伊東とアンドロイドが共演しているような稀有な感覚が得られた。初期型オプトロンが、自らの意思で明滅を繰り返すアンドロイドのように感じられ、極めて魅力的な「マン=マシーン」感覚が表出したのである。光と音が炸裂する新作《My Machines》は、このマン=マシーン感覚を、見る者の視覚、聴覚、身体に、強烈に叩き込む。
角田の「フィールド録音」は、聴覚による空間把握によって、視覚による空間把握とは異なる知覚と認識をもたらす。感動的ですらある、「描写」された「場の震え」は、いつも、「風景」を喚起し、「眺め」を生成する。近年、角田は、その「風景」に向き合う「構え」を俎上にのせ、「こめかみ録音」に取り組んでいる。左右の目や耳を前提とする「ステレオ」というシステムを、二人の人間によって成立させる、驚くべきコンセプトである。それは、「主観を保持しながら客観を作ることは可能か」というラジカルな問いでもある。
このように、美術を出自としながら「音」に深く関わってきた二人の活動へとアプローチするには、時間と空間を相対化する「速度」という視点が有効だろう。「Transmission」は、振動、音、波動、光、電気、信号の「伝達/伝送/変速」を意味する。この展覧会そのものが、「音=Sound」を介するひとつの「変速機=Transmission」として立ち現れる。その可変的時空間の只中で、鑑賞者自身も、「Transmission / Sound」という機構/装置に組み込まれたマン=マシーンと化す稀有な体験へと導かれることだろう。
▊伊東篤宏 いとう・あつひろ ▊
1965年神奈川県生まれ。1992年多摩美術大学大学院美術研究科修了 美術家、OPTRONプレーヤー。90年代より蛍光灯を素材としたインスタレーションを制作。98年に蛍光灯の放電ノイズを拾って出力する「音具」、OPTRONを制作、命名。展覧会会場などでライヴを開始する。2000年以降、国内外の展覧会(個展、グループ展等)、音楽フェスティバルなどからの招集を受け、世界各国で展示とライヴ・パフォーマンスをおこなっている。当初、遠隔操作で独立したオブジェクト/インスタレーション装置だったOPTRONも数々の改良を重ね、2005年より現在の手持ちの形態となり、所謂サウンドアート的展開からロック~ジャズ~クラブミュージックまで、音の大小や空間の規模を問わないそのパフォーマンスで、様々なタイプのサウンド・パフォーマー達やダンサーとの共演、コラボレーションも多数おこなっている。ここ数年はカールステン・ニコライらの「diamond version」へのゲスト参加やHIP HOPレーベル「BLACK SMOKER records」からのCDリリース等、ジャンルやスタイルの枠を飛び越えたさらなる幅広い展開を見せている。
(左)《OPT-RGB-B @ NYK》2008年|撮影:Ryu Itsuki
(中)《OPTRON @ TAUM》2002年|撮影:多摩美術大学美術館
(右)《OPTRON @ KCM》2006年|撮影:川崎市市民ミュージアム
▊角田俊也 つのだ・としや ▊
1964年神奈川県生まれ。1992年東京藝術大学大学院美術研究科修了。
主な展示に2013年「Luke Fowler & Toshiya Tsunoda」(タカ・イシイ・ギャラリー、東京)、「SOUNDINGS-A CONTEMPORARY SCORE」(ニューヨーク近代美術館、アメリカ)、2012年「きこえないおと(企画:椎木静寧)」(Talion Gallery、東京)、2012年「SIMPLE INTERACTIONS.SOUND ART FROM JAPAN」(Museet For Samtids Kunst、デンマーク)、2008年「21:100:100 One Hundred Sound Works by 100 Artists from 21st Centry」(Gertrude Contemporary Art Space、オーストラリア)、「横浜トリエンナーレ2008(ルーク・ファウラーとの共作)」(横浜)など。主なパフォーマンスに2014年「CONcretism/Sound of the Real」(企画:梅津元)、2013年Rockbund Art Museum、上海、TramVibration Live in Combino (Haco+ToshiyaTsunoda)「Liquid Architecture 14」メルボルンなど。
(左)《こめかみ録音(L. ch)》 2010年|撮影:坂田峰夫
(中)《2人で1つのステレオ音響》2012年|Talion Gallery 撮影:椎木静寧
(右)《Ridges on the Horizontal Plane》展示風景 (Luke Fowlerとの共作) 2013年|ニューヨーク近代美術館
アーティストトーク 伊東篤宏×角田俊也×梅津元