EXHIBITION
上|河口龍夫《関係ー電流》1972年–、中|今井祝雄《この偶然の共同行為を一つの事件として••••••》1972年(今井祝雄×倉貫徹×村岡三郎)撮影:夏谷英雄、下|植松奎二《截接ーCutting》1971/1975年
予告
αMプロジェクト2025–2026
立ち止まり振り返る、そして前を向く | vol.2

河口龍夫、今井祝雄、植松奎二|1970年代

Tatsuo Kawaguchi, Norio Imai, Keiji Uematsu: 1970s
2025年7月19日(土)–9月20日(土)
[夏期休廊:8月10日–25日]
12:30–19:00 / 日月祝休 入場無料
ゲストキュレーター:大槻晃実(芦屋市立美術博物館)
アーティストトーク
「あの70年代、関西」
7月19日(土)15:00-17:00
今井祝雄、植松奎二、大槻晃実
※トーク終了後に植松奎二さんによるパフォーマンスが会場で行われます

「60年代のグループ〈位〉と70年代の自作を語る」
8月30日(土)15:00-17:00
河口龍夫、大槻晃実
関連展示
「映像/1970代」
8月30日(土)、9月2日(火)、3日(水)
助成:公益財団法人 花王芸術・科学財団
協力:相澤和広、藤本由紀夫、ARTCOURT Gallery、Gallery Nomart、YOKOTA TOKYO、Yumiko Chiba Associates
作家テキスト
1970年代
河口龍夫、今井祝雄、植松奎二

〈存在〉を意識することによって
〈存在〉と〈存在の認識〉との隔りを明確にすること あるいは
その隔りをなくすため 〈存在の認識〉を消去すること そして
〈存在そのもの〉を〈存在〉させること

河口龍夫 

中原佑介、峯村敏明編『第10回日本国際美術展——人間と物質』毎日新聞社、日本国際美術振興会、1970年。

さて街の騒音と心臓音を等価として、美術館や画廊などの特殊な場ではない、まったくの日常空間のなかに、果たして偶然の通行人にこのイヴェントがいかに関わっていったか。
***
 行きずりの通行人の耳に侵入した、この二つの異質な“音”の出会い。それが美術家なる人種の仕組んだことなど、通行人にとってはその“音”以上のなんの意味も持たないだろう。そして今回、“美術”や、“芸術”という言葉を一切使わなかったことも、通行人にとっては幸い(?)であっただろう。なぜなら、“美術”といったとき、“美術”に関係のない人たちにとっては、それは一つの呪縛でしかないからである。

今井祝雄

今井祝雄、倉貫徹、村岡三郎「雑踏のなかで心臓音ドクドク」『美術手帖』1972年10月号(通巻359号)、12頁。

みえる構造・存在・関係をあらわにみえるようにすること。
みえない構造・存在・関係をみえるようにすること。
みえる構造・存在・関係をみえなくすること。
この3つの合い矛盾するみえない、みえるということで
人間の理解を拒絶する世界(宇宙を含んだ)と、
いま、いかにかかわっていくかということ。

植松奎二 

『1972京都ビエンナーレ』京都市美術館、1972年。

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キュレーターテキスト
確固たる意思がそこにある。/ 河口龍夫、今井祝雄、植松奎二の現在
大槻晃実

現在の美術の時間を再考するために、立ち止まり振り返りたい。
60年代の学園紛争を起点に展開したvol. 1の次は、1970年代に若者として関西に過ごした、「関係」を主要なコンセプトとして仕事を続ける河口龍夫(1940–)、日常へささやかな異和を差しはさむことで社会の在り方を探る今井祝雄(1946–)、世界を構成する要素とその相互関係に深い関心を寄せる植松奎二(1947–)を結びつけるキーワード「京都アンデパンダン展」と「共同行為」を軸に1970年代の作品を展示する。

本展を懐古的な視点で見ていきたいのではない。
彼らの表現を現在の視点から照射することで浮かび上がる、思想と精神性を探ることを目的とする。50年以上にわたって持ち続ける彼らの確固たる意志、その態度を知ることは、美術と共に歩もうと試みる私たちの原動力になると信じて、vol. 2を開催する。

[出品リスト]
1. 河口龍夫《関係》1970年、コピー・紙、作家蔵
 「1970京都アンデパンダン展」京都市美術館、1970年
2. 河口龍夫《関係—電流》1972–1975年、銅・電気、作家蔵
 個展、ピナール画廊、東京、1972年
3. 植松奎二《水平の場》《垂直の場》《直角の場》1973年、写真、作家蔵
「1973京都アンデパンダン展」京都市美術館、1973年
4. 植松奎二《在 / Situation-Cloth-Triangle》1975/2025 年、石・綿布 作家蔵
 河口龍夫・植松奎二「2人の現代作家と南蛮美術館」南蛮美術館、神戸、1975年
5. 河口龍夫、植松奎二、村岡三郎《映像の映像—見ること》1973年、映像、作家蔵
 NHK『兵庫の時間』で放映
6. 今井祝雄《ウォーキング・イベント—曲がり角の風景より》1977年、写真・地図・資料、作家蔵
 「1977京都アンデパンダン展」京都市美術館、1977年
7. 今井祝雄、倉貫徹、村岡三郎《この偶然の共同行為を一つの事件として……》1972/2025年、心臓音+トランペットスピーカー+オシロスコープ各3 ※再演
 「この偶然の共同行為を一つの事件として……」(御堂筋、大阪、1972年)
8. 「映像/1970年代」と題して、彼らの映像作品を3日間上映する。
 8月30日(土)、9月2日(火)、3日(水)。※詳細はウェブサイト、SNS等を参照

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プロフィール

河口龍夫
Tatsuo Kawaguchi

1940年兵庫県生まれ。1962年多摩美術大学絵画科卒業。1965年グループ〈位〉を結成。「第10回日本国際美術展(東京ビエンナーレ「人間と物質」)」(1970年)や「第8回パリ青年ビエンナーレ」(1973年)、「第12回サンパウロ・ビエンナーレ」(1973年)、「大地の魔術師たち」展(1989年)に出品。国内各地の美術館でも個展の開催やグループ展の参加など発表が続き、2007年には名古屋市美術館と兵庫県立美術館で同時期に個展が開催された。「見えるもの」「見えないもの」の関係を問うとともに、鉄・銅・鉛といった金属、光や熱などのエネルギー、土、水、空気、化石や貝、植物、蜜蝋、書物などの物質を用いて、モノの本質に向き合い「関係」をテーマとしたコンセプチュアルな作品を制作している。

今井祝雄
Norio Imai

1946年大阪府生まれ。1964年、大阪市立工芸高等学校美術科在学中にヌーヌ画廊(大阪)で初個展「17歳の証言」展を開催、同年「第14回具体美術展」に出品。翌年、具体美術協会(具体)の会員となる。1966年に「第10回シェル美術賞」で一等賞を受賞、同年にグタイピナコテカで個展を開催。白一色で塗られた絵画や立体作品、モーターを利用した作品を「具体」で発表する一方、「第1回草月実験映画祭」(1967年)や「現代の空間’68―光と環境」(1968年)では映像や光による作品を発表するなど、「具体」の新時代を担うメンバーの一人として、「具体」が解散する1972年まで会員として活動した。「具体」解散以降は、写真や映像、音などのメディアを用いた作品を数多く制作している。

植松奎二
Keiji Uematsu

1947年兵庫県生まれ。1969年神戸大学教育学部美術科卒業。同年、ギャラリー16(京都)で初個展。1974年神戸市文化奨励賞受賞。翌年、当時の西ドイツに渡る。1976年ストックホルム近代美術館にて海外で初めての個展が開催された。1988年「第43回ヴェネツィア・ビエンナーレ」日本代表に選出。1990年「第12回神戸須磨離宮公園現代彫刻展」大賞受賞。石、木、布、鉄、ガラスなどを用いたインスタレーションのほか、彫刻、写真、映像、パフォーマンスなどにより、重力・張力・引力といった見えない力の法則から、世界の構造・存在・関係をよりあらわにしてきた。自身の身体を用いた空間の存在把握や、人と物体との関係性などを知覚させる作品を数多く発表している。

(左)河口龍夫《関係―電流》1972年–
(中)今井祝雄《この偶然の共同行為を一つの事件として••••••》1972年 (今井祝雄×倉貫徹×村岡三郎) 撮影:夏谷英雄
(右)植松奎二《截接―Cutting》1971/1975 年