『東京計画2019』vol.3 Urban Research Group

Plans for TOKYO 2019 vol.3 Urban Research Group

2019年7月27日(土)~9月14日(土)
July 27, 2019(Sat.)-September 14, 2019(Sat.)

11:00~19:00/日月祝休 入場無料
[夏季休廊 8/11-19]
11:00-19:00 Closed on Sun., Mon.,
Holidays and August 11-19
Entrance Free

ゲストキュレーター:藪前知子(東京都現代美術館学芸員)
Guest Curator: Tomoko Yabumae (Curator, Museum of Contemporary Art Tokyo)

アーティストトーク
7月27日(土)18時~
Artist Talk: July 27(Sat.) 18:00-

オープニングパーティー
7月27日(土)19時~
Opening Party: July 27(Sat.) 19:00-


小さくも大きくもある物語:URG論

藪前知子(東京都現代美術館学芸員)

English

都市は新陳代謝する。高度経済成長期の日本の新進建築家たちは、変化していく都市の様相を、細胞が環境に適応しつつ秩序を作りながら増殖していくという、生物学モデルを使ってイメージした。それから60年、二度目のオリンピックを迎えようとする東京で、果たしてそのような美しいフラクタルが実現したのかといえば、私たちの目の前にあるのは、理想と現実がキメラ状に編まれたいびつな街である。律動的であったはずの都市の増殖に、何が抵抗として働いたのだろうか?

「東京計画2019 vol.3」は、既存の都市論のオルタナティブを志向する、不特定多数のアーティストによるコレクティブ、URGが展開する。この中でキュレーターの役割を果たしてきた石毛健太、垂水五滴の二人に、四谷未確認スタジオを主宰する黒坂祐を加えた三人で、今回は、自ら制作した作品を発表する。彼らの活動が最初に注目されたのは、2018年秋、石毛の生まれ育った品川区八潮団地の集会所にて開催された「変容する周辺 近郊、団地」展である。高度経済成長期の人口増加に対応すべく、東京湾岸を埋め立てて造成された団地群は、バブル崩壊や東日本大震災、高度情報化社会やグローバリゼーションなどの動きに晒され、時を経た現在、どのように変容しているのか。そこでは、都心に通勤・通学する核家族という住民モデルを想定して作られた郊外型団地の初期設定が崩れ、高齢化や移民の流入による住民構成の変化や、新たな文化の自生が可視化されていた。都市の片隅で、その現場に対する既存の認識に介入し、変化を与える彼らのリサーチという手法は、ストリートでの新たな実践の形と言えるだろう。

かつての建築家たちのような鳥の視点ではなく、地面から都市の変化を記述する彼らの、今回のテーマは「引越し」である。「東京計画1960」が描いたようなネットワークの交通と異なり、現実の移動は、重力や摩擦を伴う面倒なものだ。それでも人はなぜ動くのか?URGの問いが明らかにしていくのは、それぞれの人生が持つ、欲望や予期せぬ運命といった、既存の都市論では掬うことのできない動機である。

本展の中心を成すのは、大きく二つに分けられるインタビューである。まず、東京の各地の路上で、URGによって「次に住みたいのはどこ?」と訪ねられた人たちの語り。「住みたい街」ランキングの常連として知られる吉祥寺からスタートし、次に住みたいと言われた街へと移動しつつ行われたこのリサーチは、身の丈の欲望や地域カーストの存在を明らかにしつつ、東京の街を、一面的な分析をすり抜けるような形の定まらない文脈で結びつけていく。インタビューとともに展示される造形物は、その地でURGが譲り受けた、「引越し」の際に出る粗大ゴミで作られている。それを借景としつつ、展示の中心に設えられたブースの中で、マンガと音声によって伝えられるのは、メンバーの一人、垂水の家族の語りである。祖母、母、姉という三代の女性の「引越し」の物語は、仕事や異性関係を含むライフイベント、震災といった、多岐にわたる、しかし誰もが経験しうる動機によって導かれる。ほとんどの「引越し」は、個人の意志や欲望だけではなく、経済、社会、自然環境など、複数の軸が交わった時に起こる(鑑賞者が外側の他者の物語を取り込んで風景を編集できるように、マンガの枠が部分的にくり抜かれているのはこの意味である)。ここで引きずり出されるのは、都市の隙間にある、小さくも大きくもある物語であり、「恋愛」「結婚」「誕生」「死」といった抽象的な概念に収斂される前の、過程としか言いようのない人生の一側面であり、さらには、能動性と受動性の中間にある人間の判断領域である。URGのメンバーは、ここから、「建設的な諦観」ともいうべき、現状肯定の可能性を見出したいと語る。奇しくもこの展覧会は、参議院選挙のさなかに準備された。若者の投票率の低下と世代間格差の関連が話題となった選挙戦だったが、投票活動も「引越し」も、現状を受け入れつつ未来に投機するという点で重なってくる。その先にあるのは、幸福とは何か、人はそれをどのように得られるのかという大きな問いなのかもしれない。ポスト・ロスト・ジェネレーションともいうべき彼らの活動は、まだ始まったばかりである。

 

▊Urban Research Group あーばんりさーちぐるーぷ▊
アーティスト、インディペンデント・キュレーター、DJとして活動する石毛健太とwebエンジニア、アーティストとして活動する垂水五滴によるアートコレクティブ。今回の展覧会から四谷未確認スタジオ主宰のアーティスト、黒坂祐が参加し3名となった。「都市論の再考」をテーマに様々なメディアによって現代の都市の姿を捉える試みを発表、キュレーションしている。2018年、石毛の実家でもある品川区八潮団地集会所にて「変容する周辺 近郊、団地」を開催し活動を開始する。同年、CINRA.NET主催、「NEW TOWN2018」内展覧会「SURVIBIA!!」に参加。

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(左)「変容する周辺 近郊、団地」 2018年、会場風景(左から)中島晴矢a.k.a DOPE MEN/Scrap, Run & Build/N.T. State Of Mind、 ryusei etou/n階から目薬、名越啓介/fammilia
(中)「変容する周辺 近郊、団地」 2018年、会場風景 EVERYDAY HOLIDAY SQUAD/curry life
(右)「変容する周辺 近郊、団地」 2018年、やんツー/高齢者のための音声入力機能を用いた 自動つぶやきシステム