Mediators
「他者」という概念は、90年代前半のマルチカルチュアリズムの動向から、文化、社会、政治、身体などのさまざまな位相で重要な視点を提供した。もっとも、それらの視点は差異を強調するあまり、逆に、他者との距離感を増幅させてしまったことも否めない。90年代後半以降顕著になってきたいわゆるリレーショナル・アートは、この反省であり、同じく「他者」といっても、2000年代におけるそれは、相対的なもの、べつの他者との関係においてはじめて規定される他者と言えるだろう。絶対的な他者も自己も存在しないような状況では、作品は日常的事物へと限りなく接近することで、媒介物として機能を獲得する。コミュニケーションあるいはインタラクティヴィティ(双方性)という要素をもった、ここに挙げた4人の作家の個展をつなぐものは、「他者との関係性の構築」である。