約束の凝集 vol.4

荒木悠

Halfway Happy vol. 4 Yu Araki

2021年6月18日(金)〜 9月22日(水)
[夏季休廊:8/1-8/23]
June 18, 2021(Fri.) - September 22, 2021(Wed.)
[Summer Holidays: Aug. 1-23]

12:00~18:00※ 日月祝休 入場無料
12:00-18:00*
Closed on Sun., Mon., Holidays.
Entrance Free

ゲストキュレーター:長谷川新(インディペンデントキュレーター)
Guest Curator: Arata Hasegawa (Independent curator)

※7月13日(火)より、新型コロナウイルス感染拡大防止対策として、開廊時間を12:00~18:00に変更させていただきます。
緊急事態宣言の解除とともに通常の開廊時間に戻す予定ですが、ご来廊いただく際にはgallery αMのWebページやSNSで最新情報をご確認ください。
*Our opening hours will be changed to 12:00-18:00 from Tuesday, July 13, 2021 in order to prevent further spread of COVID-19.
We will return to normal opening hours when a state of emergency is lifted. Please refer to our website and social media for the latest information.

写真:Silvana Spada


ライナーノーツ

荒木悠×長谷川新

荒木悠(YA)と長谷川新(AH)が寄せた本展の作品についてのライナーノーツ。展示のお供にどうぞ。

1 Welcome
αMのスタッフが使用している冷蔵庫。私が知る限りではあるが、アメリカ人はよく冷蔵庫に大切な家族や友人の写真を貼っている。この冷蔵庫に展示されている写真には、私の名前が書かれたサインを持って空港や駅で出迎えてくれた人物たちが納められている。誰かと初めて会う瞬間は、その人との間では一生に一度しか訪れない。その瞬間の記念。(YA)

2 LetrA
荒木さん(スタイリスト)が経営するヘアサロンLetrA入口のネオン看板を40%サイズで再現したもの。本家と同じデザイナーに発注しました。荒木さん(アーティスト)は、今回の展示にタイトルをつけるとしたら「イメージ・チェンジ」だと言っているのですが、じっさい看板を受付に設置するだけでαMの印象がガラリと変わった。(AH)

3 Halfway Happy (Teeth)
南イタリアはバジリカータ州マテーラにある洞窟住居は、ユネスコ世界遺産にも登録されていることに加え、映画のロケ地として有名である。旧市街地(Sassi)から見える対面の岩山にもいくつもの洞窟があり、その穴が口のように見えた。滞在の最終週にコーディネーターのDario Adduce氏と彼の友人らの協力のもと、スポンジ製の歯を一時的にインストールするプランを決行、その一部始終を渓谷を挟んだ反対側から記録した。なお、これらの洞窟を現地の人たちはよく「眼」に例えられているため、「口」のイメージはなく新鮮だった、という感想をもらった。(YA)
 「約束の凝集」展ポスター、フライヤーに掲載されているのもここの写真です。マテーラで撮影が敢行された『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』公開日は当初の予定(2020年4月10日)から延びに延びて2021年10月8日に。(AH)

4 Meteorite
高校時代に、友人からプレゼントされた本塁打王マーク・マグワイアのサインボール。1998年、当時の新記録である1シーズン70本塁打や、通算本塁打記録583本はMLB史上歴代11位(2021年現在)と輝かしい成績を残すも、ステロイド使用を告白したために選手としての評価が急落し、殿堂入りを逃している。サインと一緒に書かれた「01年」は現役最後のシーズン。放物線を描く打球と、スター選手が堕ちていく様子は、隕石のようなモノなのかも知れない。(YA)

5 Eclipse
蜘蛛の糸によって宙に浮かんでいる小石と、私の右手。制作は、私の場合何と出会えるかが大きく影響し、その影響関係によって象られる。タイトルはアントニオーニ監督の映画《L’eclisse》(1962年)と、2021年5月26日のスーパームーン皆既月食を見ることが叶わなかったことに端を発している。光源であるプロジェクターのランプが太陽だとすると、スクリーンは月で、イメージを受けとる者は常にその中間にいる。(YA)

6 Oneiros’ Eye
荒木さん(スタイリスト)に、彼がiPhoneで撮りためていた日常の動画を観てもらい、その左眼をクロースアップで撮影したもの。荒木さん(アーティスト)は「自分と同姓同名の荒木さんとコンタクトをとり映像作品を制作してほしい」というオーダーを出してから一切内容を知ることなく搬入を迎えています。しかも当初はちょっとした小作品の予定だったところを(もう一度書きますが)内容を全く知らないのに、メインの空間に両面スクリーンでEclipseと対にして投影しましょうと言い出す腹の据わりっぷり。自分の名前を冠した個展でありながらも、完全に他者にその一切を委ねたプロジェクト。撮影を奥祐司、コーディネートをキュレーターが務めています。作品を作ることの無根拠さを身を以て体感できたとても貴重な機会であり、自分は絶対にアーティストじゃないわ、という確信を改めて得るとともに、どれだけ無根拠であろうと作らずにはいられない、考えずにはいられない人とこれからも並走していくぞという気持ちになりました。なお「約束の凝集」展をすでに観ていただいている人はお気づきかもしれませんが、曽根裕、永田康祐の展覧会でも奥さんが撮影で参加しており、「約束の凝集」全体を通してなくてはならない存在となっています。作品タイトルも奥さん命名。オネイロスはギリシア神話にでてくる夢を司る神です。(AH)

7 Leather Tramp
荒木さん(スタイリスト)がLetrAでヘアカットをする一部始終を彼の歩く音を中心に収録したもの。スタイリストは立ち仕事であるが、荒木さん(スタイリスト)は全く苦ではないとのこと。会場にいくつか振動スピーカーを設置。なお、映画『イントゥ・ザ・ワイルド』(ショーン・ベン監督、2007年)で主人公が旅の道中ヒッピーに言われる台詞が「Leather Tramp」であり、荒木さん(スタイリスト)は自分が店を出すときはこの名前にしようと決めていたそう。原作でも、車を所有する「タイヤの放浪者(rubber tramp)」と、自分の乗り物がなくヒッチハイクか徒歩旅行を余儀なくされている「革靴の放浪者(leather tramp)」とが対比的に言及されています*1 。(AH)

8 Deep Search (digested version)
学生時代の作品。良い子はマネしないでください。(YA)

9 Collected Moments, Transit Memories
2011年から続けていたCollected Momentsが長谷川さんと出会うきっかけになった。2015年以降、iPhoneで撮影したものに関してはTransit Memoriesとしている。シャッフル再生されているため、同じショットとショットの組み合わせに遭遇する確率が極めて低い仕様となっている。(YA)
 キュレーターは2014年頃YouTubeに公開されていたCollected Momentsを観て、荒木さん(アーティスト)に初めて展覧会への参加依頼のメールをしたためています。その後作品は2015年に大阪此花区のギャラリーThe Three Konohanaにて展示されました*2 。キュレーターにとって荒木さん(アーティスト)は、物語や歴史や言語といった人間の側の構築物を研究する人というよりも、イメージの透過、反復、反射といった現象をはじめ、なにかの動作の違和感や洗練に対してついついカメラを向けずにはいられない人として出会っているのです。(AH)

10 Lucky Charms
キュレーターの親知らず。2021年6月4日抜歯。(AH)
 Deep Search (digested version)で実際に飲み込んだ人形。Eclipseの撮影現場付近から採取された小石。(YA)


*1 ジョン・クラカワー『荒野へ』佐宗鈴夫訳、集英社文庫、2007年、p.36

*2 Director’s Eye #3 「OBJECTS IN MIRROR ARE CLOSER THAN THEY APPEAR」[IN MIRRORに取り消し線]
2015年1月10日(土)–3月1日(日) 月–水休

http://thethree.net/exhibitions/2111

▊荒木悠 あらき・ゆう▊
1982年生まれ。石川県出身。バンド活動を経て大阪の美容専門学校を卒業後、上新庄のサロンにスタイリストとして勤務。2020年6月17日に独立し、金沢市矢木にヘアサロンLetrAをオープン。店の名前は映画「イントゥ・ザ・ワイルド」(2007)の劇中の台詞「Leather Tramp(革靴で放浪する者)」に由来し、映画公開当時から独立したらこの名前にしようと決めていた。丁寧なカウンセリングで「なりたいイメージ」をすり合わせつつ、服装や肌の色、雰囲気などトータルのバランスを見極め、あなたらしさを最大限に引き出すスタイル提案を得意とする。なお、嫌いな食べ物は椎茸であり、0歳のときに食べて嘔吐した記憶を今でも鮮明に思い出すことが可能。二児の父。

LetrA
〒921-8066
石川県金沢市矢木2-140 イル・ヴィーノ1F
10:00-19:00 不定休
instagram: @letra_araki

カット ¥4,600
 大学生 ¥4,100、高校生 ¥3,700、中学生 ¥3,300、小学生以下 ¥2,800
パーマ ¥7,200–
カラー ¥6,400–
トリートメント ¥2,500

▊荒木悠 あらき・ゆう▊
1985年生まれ。山形県出身。大学で彫刻を、大学院では映像を学ぶ。主な個展に「三泊五日」板室温泉 大黒屋(栃木、2021)、「RUSH HOUR」CAI02(北海道、2019)、「ニッポンノミヤゲ」資生堂ギャラリー(東京、2019)、「双殻綱:第一幕」無人島プロダクション(東京、2017)、「複製神殿」横浜美術館アートギャラリー1/Café小倉山(神奈川、2016)。近年の主なグループ展に「Returning: Chapter 1」シドニー・オペラハウス(オンライン、2021)、「Connections―海を越える憧れ、日本とフランスの150年」ポーラ美術館(神奈川、2020)、「The Island of the Colorblind」アートソンジェ・センター(ソウル、2019)など。第5回Future Generation Art Prizeファイナリスト。

(左)「LOST HIGHWAY (SWEDED)」2018年|映像インスタレーション ボルボ スタジオ青山での展示風景
(中)「双殻綱」2019年|映像インスタレーション ピンチューク・アートセンターでの展示風景
(右)「The Last Ball」2019年|映像インスタレーション 資生堂ギャラリーでの展示風景|撮影=加藤健

協力:荒木悠 LetrA CASAMATERA Studio Antani