開発の再開発 vol.3

Sabbatical Company|Sabbatical Companyの宣言エクササイズ

Redevelopment of Development vol. 3 Sabbatical Company: Manifestos Exercise for Sabbatical Company

2023年10月28日(土)~12月23日(土)
October 28, 2023(Sat.) - December 23, 2023(Sat.)

12:30〜19:00
日月祝休 入場無料
12:30-19:00
Closed on Sun., Mon., Holidays.
Entrance Free

ゲストキュレーター:石川卓磨(美術家・美術批評)
Guest Curator: Takuma Ishikawa (Artist, Art Critic)

アーティストトーク:10月28日(土)18:30〜
Sabbatical Company ×石川卓磨
Artist Talk: October 28(Sat.) 18:30-
Sabbatical Company × Takuma Ishikawa

協力:平和紙業株式会社、株式会社竹尾


Sabbatical Companyの宣言エクササイズ

Sabbatical Company

「私たちはパズルが完成する前に額を用意する必要はなく、そもそも解くべきパズルを事前に用意することもしなくていい。人と人とが集まろうとする動機は理由をつけるまでもなく、意味があるはずだから、その意味が生まれる前の時間を、最も生産性のある場として捉え直すような活動はできないだろうか。それはきっと、手を取り合って生きていくのとは少し違う、持続された各自の人生に別の時間を確保するようなもの。ひとりでは見られない景色をみようと、Sabbatical Companyはスタートをきりました。」*

2015年の結成当初、「言葉になる手前の時間を共に過ごそう」というスローガンのもと、今はまだ自分たちのやっていることに名前をつけるのはよそう、そして10年経ったら一度この活動を振り返り、そこから生まれた言葉をまとめてみよう、と話し合いました。
活動はあと2年で10年になります。
今は、私たちが見てきた景色を言語化する準備として、身体と文字をほぐすエクササイズ中です。


* 「まえがきでもあり、サバティカルな意味では本文でもある、あとがき」より抜粋。「夕方帰宅してみると」(Milkyeast、2016)終了後に公開。

https://www.sabbaticalcompany.com/project-1-afterword

「休暇」という概念の開発

石川卓磨

 杉浦藍、益永梢子、箕輪亜希子、渡辺泰子によるアーティスト・コレクティブSabbatical Company(以下、サバカン)の活動は、2015年より開始されているがフルタイムではなく、個々の作家活動と並行的に行われている。メンバーは個人でキャリアを積み知られているアーティストたちだ。その並行的な活動の意味は、グループ名自体に示されている。Sabbaticalは「安息日を語源とし、専門性を磨く創造的な長期休暇を意味」し、「共にパンを食べる仲間を語源とする」Companyが結ばれている(サバカンのウェブサイトより)。わかりやすく言いなおすと、サバカンは、個々の作家活動の「休暇」をとって、4人で研究や実験を共有するプロジェクトだ。
 作家活動の「休暇」をとって、別の活動を行うことにはどのような意味があるのだろう。なぜ個人として活動しているのに、さらにグループで活動する意味があるのだろう。そのような質問をしたくなる。しかし、おそらくサバカンはそのような質問に対して「なぜすぐに意味を説明できなければいけないのでしょうか?」と質問で返してくるはずだ。
 アーティストに「休みの日は何をしている?」と質問すると「制作している」と返ってくることは多い。では「作家活動の休暇をとるとしたら何をする?」と聞かれたら何と返すだろう。アーティストであれば、誰もがそう問われることを想像するはずだ。アーティストにとっての「休暇」とはなんだろう。これは意外に難しい問いである。この問いに対する言語化が、サバカンの存在理由に関わってくる。
 現代美術は説明や理解が難しいからこそ、自らの活動の意味や理由を説明する言葉が求められるため、アーティストはいつも言語化や責任が突き付けられる。それがプロフェッショナルなアーティストに求められる一つの条件とするならば、サバカンのメンバーは個々にその厳しさに向き合いながら、活動や制作を行っている。しかしこの言語化には、限界や不自由さが付きまとう。
 だから、サバカンは「休暇」をとって「休暇」という概念の開発を始める。それは言語化からの逃走を意味しない。サバカンは、自らの活動の言語化を可能な限りゆっくりと行うことを決意しているのだ。言語化が目的なのではない。「言葉になる手前」の経験の共有とそれを思考すること自体が重要と考えている。休暇という概念の開発は、4人の芸術と人生のために考えられた言葉と身体の実験によって具体化される。音を出して、身体を動かして、言葉を否定して、新たに言葉を書き込むことが重要なプロセスになる。今回作られた「マニフェスト(宣言文)」は、彫刻的なニュアンスを含んだ「たたき台」であり、身体は言葉をたたくように動き出し、新たな言葉、概念を生成している。

寄稿「言葉が先か、エクササイズが先か」中島水緒

以下のリンクよりお読みいただけます。

https://gallery-alpham.com/text/20143419/

▊Sabbatical Company サバティカルカンパニー▊
杉浦藍、益永梢子、箕輪亜希子、渡辺泰子の同世代4人により2015年に結成されたアーティスト・コレクティブ。安息日を語源とし、専門性を磨く創造的な長期休暇を意味するSabbaticalと、共にパンを食べる仲間を語源とするCompanyを組み合わせコンセプトとし、プロジェクトを主体に活動を行う。主な個展に「OR We are still chatting.」TALION GALLERY(東京、2022)、「OR Have a good day.」Maebashi Works(群馬、2016)など。主なグループ展に「ところざわ アートのミライ」西武鉄道所沢駅等(埼玉、2023)、「3331 Art Fair 2017 -Various Collectors Prizes-」アーツ千代田 3331(東京、2017)など。

(左)《エクササイズ:ゴム飛び》2023年|映像
(中)《エクササイズ:バランスボール(空気を抜く)》2023年|映像
(右)《エクササイズ:紙風船》2023年|映像

アーティストトーク Sabbatical Company×石川卓磨